上手な相続時精算課税の使い方(2) どんな人が使うとよいか
① 相続税がかからない人
相続時精算課税制度の対象とする贈与財産は、相続税の計算をする際に持ち戻(加算)して計算をすることとされているが、相続税がかからない人であれば、持ち戻しされても一向にかまわないわけであるから、こういった人には、積極的に2,500万円までの範囲で贈与するとよい。ただし、2,500万円を少しでも超えて贈与すると、20%の税率で計算した贈与税を払わなければならない(この贈与税相当額は、相続税の申告をすれば還付される)し、また、相続税の申告費用もかかるので、2,500万円を超える財産を贈与しようと考えているのであれば、先に通常の贈与を使って財産を減らしておき、その後にこの特例を適用する、といったことも一つの手であろう。
② 相続税の実行税率が20%以内の人
相続時精算課税贈与は、2,500万円までは贈与税がかからないが、それを超えると一律20%の贈与税が課税される。したがって、相続税がかかる人のうち、その実効税率20%以内の人については、税額を先に払う後に払うかという違いはあるが、早い段階で財産の移転ができ、また、計画的に行えるという点で積極的に実行するメリットがあるのではなかろうか。
③ 相続税の実効税率が20%を超える人
また、相続税の実効税率が20%を超える人は、この制度の適用を受けても、その財産を持ち戻す(加算)こととなるため、あまり、相続税の節税にはならないが、次のような効果もあるので活用を検討していただきたい。
A 特定の財産を、生前に承継できる
B このことによって、遺産分割をめぐるトラブルを解消できる
C 事業承継者には、自社株など経営に必要なものを渡しておくことができる
D あらかじめ各相続人への財産の配分を決めておける
E 贈与であるから、確実に当人に財産の移転ができる
F とりあえずは、20%の贈与税で移転ができる
これは、まさに生前遺産分割としての活用である。
(『続・生前遺産分割のすすめ』より抜粋)